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ARCHIVES2021.03.22

事例報告:美里COcCARU(こっかる)プロジェクト

概要

組織名美里COcCARU(こっかる)プロジェクト
所在地下益城郡美里町三和420( 美里町役場 砥用庁舎 )
代 表園田 薫
年 齢45歳
会 員6名 園田 薫 鳴瀬信一 井澤るり子 伊志嶺朝紀 石田貴嗣 矢ヶ井那津
サポーター山口久臣( 一般社団法人 IOE )
種 類任意団体( 準備委員会 ) 
活 動1)(仮)山菜ファームプロジェクト
2)(仮)焚き火サイトプロジェクト
3)(仮)山里トレッキングプロジェクト
設立年月日令和3年4月予定(準備中)
連絡先0964-47-1111(美里町役場 砥用庁舎)

 地域が抱える高齢化や若者の流失、人口減少等の課題に対し、山菜を活用した取り組みが始まったが、その活動の中で山林の荒廃の問題等もクローズアップされ、活動の方向性とコンセプトを明確にする必要性に迫られた。今回、地域課題解決プロデューサーとの議論により、新たな枠組みにより、再出発を行うことになった。
 この様に、地域づくりの活動においては、その活動内容の議論だけが行われ、目的やコンセプトの議論が不足するため、活動の広がりや深化に欠ける場合が少なくない。
今回の事例は、この様な場合における一つのモデルとなると思われる。

1)これまでの経緯

 この事業は、当初、山菜が主力商品となっている直売所の「ほたる」を立ち上げた鳴瀬信一氏が、高齢者の生きがいの一つとして、山菜の育苗や栽培で収入を得て貰い、生涯現役で幸福度の高い生活が出来る環境づくりと共に、若者の雇用も出来ないかとの思いで始まった事業である。
 一方、美里町に地域おこし協力隊員として3年前に赴任した園田薫氏は、美里町が高齢化し、若い人も町外に流出し人口が減少する現実を直視し、新たなビジネス等を起こし、若い世代が暮らしやすい環境づくりが出来ないかと考えていた。
 これらの問題に対して、鳴瀬氏が10数年前の山形県の視察時から「スベリヒユ」に着目していたため、平成28年から鳴瀬氏や井澤氏が所属する美里町産業連携協議会において園田氏と共に、山菜スベリヒユの商品化を軸に模索することになった。
 令和元年7月には、町内の全世帯にパンフレットを配布し「スベリヒユ料理コンテスト」を開催し、12組29品目の応募があり一定の成果はあったが、その後の活動はコロナ禍で休止せざるを得なかった。しかし、これらの活動の中で、山菜ファームと言う個別プロジェクトではなく、まちづくりの構想として展開することが必要と言うことで模索が行われていた。
 このため、活動の再開にあたり、プロジェクトの目的をもっと明確にする必要があるとの認識に立ち、「地域課題解決プロデューサー人材活用事業」を活用したグループワークが開始された。 
 これらの議論では、山菜だけではビジネスにはなりにくいことから、今ある美里町の資源を使ったまちづくりの視点、未来に向けて守るべき町の姿について話し合い、美里町全体をフィールドにした活動の目的を「美里の豊かな山里を守り、活かし、未来につなぐ」というコンセプトとして集約することが出来た。このコンセプトを基に、ソーシャルビジネスを展開する組織として「COcCARU(こっかる)」という団体を設立し、新たな活動として再起動する為、賛同者等を募ることになった。

今後の主な活動

1)美里まるごと「山菜ファーム(仮)」 ⇒ 生き甲斐づくり、幸福度の向上
    山菜の管理、収穫、出荷・山菜クッキング、収穫体験、加工
2)体験型観光「焚き火サイト(仮)」 ⇒ 山里の暮らしを語る、伝える
    焚き木拾いからはじまる焚き火体験・焚き火関連ものづくり・販売(薪・火吹き竹等)
3)山里トレッキング「森の冒険(仮)」 ⇒ 森を知り、森の保全につなぐ
    森の冒険、トレッキングガイド、森の現状を伝えるツアー、害獣防止につなぐ人の気配
これら3つの活動を、「美里町を楽しむ新しいメニュー」として育てることを目指す。

2)メンバーの構成と特徴

 地域おこし協力隊を本年5月末に卒業する園田薫氏を代表とし、美里町産業連携協議会の商品部会長(砥用物産館「ほたる」)鳴瀬信一氏と観光部会長(美里フットパス協会)の井澤るり子氏が、地元との調整役として参加し、美里自然学校の伊志嶺朝紀氏が体験活動等の実践とリスク管理を行い、地域おこし協力隊の石田貴嗣氏、矢ヶ井那津氏がサポートする体制になった。
 なお、各事業の展開にあたっては、体験型観光としての側面もあり、町民から募集したマイスターを育成し、町民と一体となった展開を行うことにしている。
 地域づくりにおける若者への世代交代も考え、代表は園田氏とし、園田氏の想いを具現化するために地元に大きな影響力をもつ鳴瀬氏と井澤氏が地元との調整役として園田氏の活動を支えることとしている。
 この様に、若いリーダーが活動を担い、ベテランがそれをサポートする体制は、地域づくり活動の発展と活動の継続の為には不可欠な要素であり、今後の展開が興味深い。

3)地域課題解決に向けた活動

 COcCARU(こっかる)が目指す活動は、全て地域課題解決を目的とした活動である。
「山菜ファーム(仮)」は、山菜の管理、収穫、出荷を通じた高齢者の生きがいづくりを目指したものであり、「焚き火サイト(仮)」は、山里の暮らしの豊かさを伝え、美里町への移住定住への切っ掛けづくりともなり、「森の冒険(仮)」は、森の現状を伝えるとともに、人が継続的に森に入ることによって害獣の防止につながる活動でもある。
 この様に山里の豊かさをベースにした活動は、地域に賑わいをもたらすと同時に住民の誇りへとつながる活動であり、今後の展開が楽しみである。

4)行政との付き合い方、捉え方、関係の深さ

  この活動は、町が設置した「美里町産業連携協議会」のメンバーである鳴瀬氏、井澤氏、伊志嶺氏と関係する地域おこし協力隊員で動かしているものである。協議会の商品部会で、美里町の地の利を生かし山菜によるまちづくりを考えた。この協議会を活用した事業であるため、スベリヒユの料理コンテストの周知等において、町内の全世帯にチラシ等で周知することができた。
この様な全世帯への周知が活動開始と共に行われたことで、町民の活動への理解と、参加や協力体制の確立に大いに役立っている。
 また、地域おこし協力隊員のやりたい活動を快く承認し、サポートする町役場の姿勢も大いに評価できるところである。

5)地域との関わり方

 森、山菜等、山里としての美里町の今ある地域資源を活用した事業展開であり、その事業展開においても町内の全戸に周知して活動を始めるなど、常に地域を意識した活動を行うことにしている。
 今後の活動の展開においても、美里町の「豊かな山里を守り、活かし、未来につなぐ」をテーマにした展開であり、これからも町民による様々な事業の展開が期待できる。
 また、先行している美里フットパス協会の取組み、全町民への周知、意欲のある町民による先行実施、地域にあった活動の展開などの成功事例もあり、これらを参考に事業が展開されれば、全町が一体となった事業展開になると思われる。

6)活動によって得られた成果

 具体的な活動はこれからであるが、これまでの議論の中で「山里に暮らすことの素晴らしさ、未来に残すべき暮らしの原点が美里町にはある。」との共通認識が得られたのは大きい。活動の素材が他からの借り物でない地元のものである事は、より美里町を売り出す良い機会となると思われる。
 また、若い人を中心に活動を広げ、それをベテランがサポートし、町民全体が関わる機会を設けていることは、人材育成、町民の意識の醸成に大いに貢献できると思われる。

7)今後の課題と次年度以降の計画

 現在は、基本的なコンセプトが共有できた段階であり、具体的な活動はこれからである。現在提案しているプログラムに、より多くの町民が参加できると仕掛けと同時に持続的な活動となる工夫が望まれる。

まとめ

 スベリヒユ、山菜の活用という事から始まった活動であるが、議論の中で森の保全や谷川の復活等の地域課題への対応も議論された。これを「美里町の豊かな山里を守り、活かし、未来につなぐ」というコンセプトにまとめ、その方向性を明確に出来たことは、美里町における今後の地域づくり活動にとって大きな収穫であった。
 この様に、明確な目的、コンセプトの議論から始める活動が大事であり、その重要性に気づくと同時に、若い人を中心に多くの人々が関わる仕組みづくりを行うことが、持続的な地域づくり活動を行うためには大事だと考える。

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