地域課題解決プロデューサー人事活用事業地域づくりプラス

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ARCHIVES2021.03.24

R2年度地域課題解決プロデューサー事業について(総括)

1)経緯

 歴史的な転換期を象徴するような全世界での新型コロナウイルス感染症の蔓延、各地で勃発する気候変動による災害、これらを起因とする差別や分断、格差など、これまで潜在的にあった社会的課題が表面化してきている。熊本県も全国の他の地域と同様、少子高齢化、若者の流出、人口減少、子どもの貧困や女性・高齢者の孤立等の人の問題から、山林の荒廃、空き家問題、害獣被害、自然災害などがあり、これらの社会的課題と暮らしは隣り合わせの時代となった。
 この山積する課題を前に、今、私たちは、本当の幸せとは何か?自分だけではなく、周りの人々やその地域、次世代の幸せとは何か?も問い直し始めている。また、コロナ禍の新しい生活様式を模索する中で、リモートワーク、地方移住やマイクロツーリズムなどの地域の可能性を再評価する動きも加速している。

2)社会課題解決の動き

 現在の社会の抱える課題の解決を世界全体で2030年までに達成しようというSDGs(持続可能な開発目標)が提示され、社会課題解決も一つの目的とすることで企業の存在意義や、社会的役割を模索する動きも増えつつある。
 県内にはこのSDGsの提唱以前から、身近な暮らしや地域をより良くすることを目的とした地域づくり団体が多数存在し、行政だけでは解決できない課題に対し熱意をもって実践し、地域での大切な役割を担っていた。
 しかし、運営上の課題や、今の時代に合った活動への変化を求められる悩みも生まれている。このため、これらの課題を抱える団体へのサポートは、地域全体の社会課題解決や地域の価値を高めることに繋がり、ひいては県民の幸せにつながると思われる。

3)団体調査アンケート

 本事業では、まず、地域づくり団体の現状を把握するための団体調査アンケートを実施した。明らかになったのは、既に活動を中止もしくは縮小している団体が少なからず存在し、活動を行っている団体でも、活動を継続する上で様々な課題を抱えている実態であった。
 また、私たちはアンケートの前に全市町村を訪問したが、実態の把握に至らないケースが多く、特に自主的に動いている若い世代の状況については情報が少なく、現段階における実態把握の限界を感じた。運営上の課題については、資金調達や人材育成に関する課題が多かったが、団体により状況は異なるため、未来へのプランや課題を聞く相談窓口や、活動のサポート体制の必要性を強く感じた。
 活動実態の把握や活動における課題の把握は、ニーズに応じた支援をするために不可欠なプロセスである。

4)事例報告1 / 美里COcCARU(こっかる)プロジェクト

1.活動を深化する

 元々、「山菜ファームプロジェクト」として山菜を活用した取り組みを始めたが、本事業で改めて活動の目的やコンセプトの議論を促し、「豊かな山里を守り、活かし、未来につなぐ」という共通認識が得られ、今後の活動の土台ができた。

2.多様なメンバー内の信頼関係構築

 長年地域づくりをしてきた経験者と地域おこし協力隊等で多様な価値観を自由に共有しあえる信頼関係の醸成が進んだ。経験者はあくまでサポート役で、若手を育てる意識で取り組んでいる。

3.町民との目線あわせ

 お知らせの全戸配布や、地域の人が初めてでも参加しやすい仕組み作りをすることで、一団体の取り組みから、町全体への取り組みへの目線合わせの配慮が随所にあった。これは活動の広がりや町民の理解を進めるうえで非常に学ぶべき姿勢である。

5)事例報告2 / 一般社団法人パレット

1.変化を生み出す、対等でオープンな関係性

  メンバー全員が、自分の考えを他メンバーや行政に積極的に提案し、お互いに応援しあう対等でオープンな関係をつくっている。このため、パレットには、一方的な強制や要求、前例のないことはしないという古い体制はなく、柔軟で一人一人が主体的にチカラを発揮できる体制となっている。

2.熱く明確なミッション

 「目指すは、人口1万人から、ドラム型人口動態で2万人へ!」という明確なミッションを持ち、その事業をなぜ展開したいのかが共有されているため、お互いの理解も早い。そこから、甲佐町を知ってもらう、来てもらう、住んでもらうための様々な活動が行われ、熱い想いやミッションと共に仲間も広がっている。

3.コミュニティ・ビジネスで地域づくり

 運営する地域密着型のレストランや宿、スポーツ事業等は、地域課題解決に向けたコミュニティ・ビジネスでもある。域内調達率向上にも取り組み、事業を通じて経済的に自立した団体運営が可能となり、結果として20代〜40代の方が5人の移住した。地域づくりは、ボランティアというだけでなく、事業の中で課題を解決すると言う事例を示したのも大きな成果である。

まとめと展望

 本事業を受け、地域課題に取り組む団体の情報把握不足が顕著であり、ニーズに沿った支援のためにも現場ファーストの姿勢で声を拾う仕組みの必要性を痛感した。美里COcCARUプロジェクトは目の前の活動内容の議論から、理念やコンセプトといった議論へ深化した結果、新組織へつながり嬉しく感じている。また、一般社団法人パレットの考察により、表面的に動いている事業の水面下にはメンバーの地域課題に対する危機感やミッションの共有、忌憚ない議論、行政との信頼関係、地域内の経済循環など、今の時代にあった地域づくりの要素がとらえられた。今後、明らかになった課題や新時代に対応した地域づくりのためには、以下が求められる。

①現状把握:実際現地での活動の実情を把握する人材育成。
②支援体制:より良い活動をしたい団体の相談窓口。各課題に対応したセミナーや勉強会
③情報発信と交流:各地域での取り組みや、人と人のつながりを可能にする情報プラットフォームや、実際つながる場づくり。

 社会課題解決は、とかく暗く難しそうな印象があるが、多様で複雑な社会課題が身近なこととなった。一方で、地域への意識や関心を持つ人も増えていることは希望であり、団体支援や情報発信、交流の場を広げることで、新たな層の人材育成にもつながっていくことが必要である。それを他の団体、地域、行政、企業、金融機関などとつなげ、地域の潜在的な可能性を一緒に高めあう。それが県民総幸福量の最大化にもつながると考えている。

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